食事療法 2


7つの原則

1.腹八分目の原則

 もうこれ以上食べられないと言う程食べる人が言いますね。これはダメです。

 

 胃腸は食べ物を一時的に貯める器であると同時に入ってきた食べ物をゆっくりと消化していく働きがあります。一度に沢山の食べ物を胃腸に押し込む事は、高速の入口にたくさんの車が一度に押し寄せてくる様なもので必ず渋滞をひき起こします。消化管も一度に沢山の食べ物が送られてくると、胃腸に大きな負担をかけてしまいますし、消化に多くのエネルギーが必要となり、他の臓器にエネルギーや血液が行きずらくなってしまいます。

 食べた後によく眠くなる人がいますね。これは消化のため胃腸に血液やエネルギーが取られて脳の働きが低下するためです。疲れている時などは特にそういう傾向が強いのです。ですから疲れている時や、病後の回復期などには一層腹八分目を心がけるべきでしょう。風邪の時や、疲労の激しい時に沢山食べれば体に力が出るといってバカ食いをする人がいますが、これは差し控えるべきでしょう。


2.早食いは万病のもと

 良く噛まないで食べる人がいますね。口に入れたら4、5回噛んですぐ飲み込んでしまう人です。そういう人はだいたいがせっかちな人か、忙しい人です、このような人は長生きしませんね。

 

 何故長生きしないのでしょうか?

 噛むことにより、食物は細かく小さくなり、良く唾液と混じりあい消化されやすくなります。さらにその味の刺激で胃の蠕動運動が強くなり、胃酸や膵液、胆汁等の分泌が高まります。ところが、良く噛まないで食べた場合は、唾液等による消化作用が弱められるため、直接胃に食物が送られて、胃の消化作用に大きな負担がかかってしまいます。いつも胃の調子が悪いという人は、だいたい早喰いで良く噛まない人か、歯の噛み合わせが悪いか、歯そのものが悪い人です。

 このような生活を続けていると、他の臓器にも悪影響が出てきてしまいます。胃腸は後天の気を取り入れる大切な臓器であります。他の生物からエネルギーを取り入れなければ我々は生存していかないわけですから、そのエネルギーを取り入れる大切な器管を弱めてしまうと長生きは出来ないわけです。


3.身土不二の原則 

 「」とは自分の体を意味します。「」は自分を取り囲む外界環境を意味します。つまり、自分と自分を取り囲む環境、「国土」は一身一体で密接不可分である事を現しています

 

 自分の生れ育ったその土地で生産されたものを食べてゆけば間違いないということを意味します。寒い土地に生活している人は、寒い環境にに適したものを、熱い土地に生活している人は熱い環境に適したものを摂取していけば体に良いわけです。熱帯などの熱い土地でできるものは、水分が多く、体を冷やす性質のものが生産され食べられているわけです。

 もし寒冷地の人が熱帯の食物を食べ続けたらどうでしょう?

 体は冷えてしまいますし、浮腫んでくるとおもいます。そしてこのような間違った食習慣が病気を作り出してきます。自分の生まれ育った土地から生産されたものを、筍のうちに食べることが食生活の基本になるのです。

 夏のものは、夏のうちに、春のものは春のうちに食べることが大切です。冬にトマトやキュウリ、レタスを食べることは異常ですし、夏に白菜を食べることも異常なわけです。季節から外れたもの、筍でない食べ物は、それ自体が異常ですし、異常なものを食べれば体もいつしか調子を崩してくるわけです。ビタミンやミネラル、カロリー等のみで食品の善し悪しを判断しがちですが、食物が作られた環境とその食品の性質も考えなければいけません。


4.寒性食品、温性食品、平性食品

 寒性食品とは文字どおり体を冷やす性質を持つ食品です。ですから夏の暑い時期に食べるといいですね。キュウリ、トマト、スイカ等です。その反対が温性食品(熱性食品)、これは体を温める作用のある食品です。ニンニク、ネギ、ニラ、ショウガ、羊の肉等です。平性食品は味が淡白で飽きのこないもの、寒性にも温性のどちらにもあまり偏らないもので、主食になる様なものです。代表的な食べ物は、米です。

 

 寒性の食品も炒めたり、熱を通して温かく調理して頂くと温性の食品へ変化することがあります。例えば魚も生で刺身などで食べると寒涼性の食べ物になり冷えを助長します。ところが、ショウガなどを入れて煮魚にして頂くとこれは立派な温性食品です。


5.玉子について

 この頃、玉子をよく食べる人がいます。アメリカ映画の影響でしょうか、朝はかならず玉子料理という人がいます。玉子は西洋学的にも東洋医学的にも完全食品に近い物があり評価できるものです。一つの玉子には、ひな鳥が生まれるに必要な全ての栄養が含まれおり、そういう意味においては完全食品といってさしつかいないでしょう。

 

 しかし人間にとっては完全食品とは言えません。ある人にとっては玉子の一つの成分、例えばコルステロールなどが過剰な場合があるわけです。また現在の玉子が生産される過程を見てみますと、抗生物質などが多量に含まれた合成飼料を、狭いゲージの中で食べ続けるニワトリから生まれでてくるわけですから、放し飼いにされた物とは質的に違います。

 毎日食べる食品ほど気を使わなければならないと思います。


6.乳製品について

 玉子と同じように、この頃の食卓や冷蔵庫に欠かせない食品の一つとなりました。世界中でこれほど民族や習慣に関わらず飲まれたり、食べられたりしている食品はないと思われます。確かにその栄養学的価値は優れたものがあります。ですから、上手に食品のレパートリーの中に取り入れることは大変良いことだと思います。カルシウムの含有率も高く、その点からも、発育期の子供には必要なものと思われます。

 

 しかし、乳製品の多くは日本の国土、気候に適合しない点を持っています。日本は四季に恵まれている素晴らしい国ですが、海に囲まれ山岳地帯を中心に持つ国でもあり、特に本州では春から秋にかけて大変湿度が高くなる傾向があります。乳牛は元来高温多湿を嫌います、ですから牛乳の生産地は北海道や、八ヶ岳などの高原地方になるわけです。高温多湿のところでは、乳製品はすぐ腐敗してしまいますね、反対に湿度の低い冷涼の地方では保存性が高まるわけですね。

 乳製品は一般に粘りの強い、膩性の高い食品とされています。ですから乾燥の強い地方では身体を乾燥から保護する上で大変有用な食物となります。しかし湿度の多い地方に住む人は、一般に湿気を身体に溜めやすくなり、
湿気や水毒の病気になりがちです。膝の関節に水の溜まる関節水腫、鼻水や涙がいっぱい出てくる花粉症などが良い例です。このような地方の人が乳製品を食べ続けると、身体により強く湿をよぶことになり、病状は悪化することになります。

 自分の体質をよくよく考えて乳製品を取らないといけません。アレルギー体質、膠原病体質、湿度が高くなると痛む様な病気、喘息、糖尿病等の人は気をつけるべきでしょう。


7.健康食品

 この世の中で健康食品はものすごい数でまわっています。本当に必要なものなのでしょうか?本当に安全なものなのでしょうか?毎日毎回の食事に気をつけている人が本当に健康食品とよばれる、補助食品を取る必要があるのでしょうか?多種類のビタミンを含有する錠剤を野菜が取れないからといって飲む人がいますが、これが野菜の代わりになるでしょうか?

 

 基本的に毎日の食事で口に入れるものはなるべく人工的な変形や加工が加わっていないものを摂取すべきです。原材料が良いものでも人工的な加工がなされることにより、原材料とは全く異なる効果のものができてしまう可能性があります。ほとんどの健康食品は、加工されて錠剤や粉末になっています。

 もし健康食品を摂取したいのであればその使われている材料をうまく食事の中に取り入れるべきでしょう。人工的に簡略化、簡便化されたものは日々の生活の食生活の中に取り入れるべきではないと考えます。

 医薬品健康食品はどのような違いがあるのでしょうか?

 医薬品は使用する上で、厳しい基準があります。例え漢方薬にしてもです。厳しい基準を設けることによって知識のない人が濫用するのを防いでいるわけです

 健康食品は名前だけ食品としておきながら、その効用は医薬品以上の宣伝であったりします。質的に医薬品と同じ様な性格を持ちながら、なんらの規制もなく、知識の乏しい人たちが、その宣伝文句に釣られて多用、濫用しているのが現状だと思われます。ビタミン剤にしろ、クロレラにしろ、鮫の軟骨にしろ、アガリスクにしろ人類の長い食文化において特異な食品なのですから、摂取するにあたっては十分な注意が必要でしょう。